好きなことを仕事にするということ

転職してもう少しで1年になる。

転職するときに周りの方に良く言われ、今もたまに前職の同期と飲んだりするときに割と話題になるのが、「好きなことを仕事にすること」についてだ。

一年経って色々と思うこともあり、少し振り返ってみようと思う。

  

   

前職では総合商社の金融部隊に所属し、コモディティデリバティブの先物取引を生業とする100%子会社の事業管理を約3年ほど行っていた。

ざっくりいうと子会社の経営管理的な仕事が多く、東京にいながらロンドンやNY、シンガポールの子会社に出向しているCOOやCFO、CAOのサポートをする仕事をしていた。

出向者と連携を取りながら、子会社の決算管理や与信リスク、規程の整備、取締役会の運営といった業務だ。

(商社の仕事は最近読んだこの記事がわりかし実態に近いと思う)

 

加えて、子会社の撤退や統合、清算といった会社が無くなる・一つになるという事象を経験し、運良く?英国のEU離脱、トランプの大統領選挙の勝利といったマーケットが荒れる瞬間に立会い、マクロ経済に片足を突っ込んで仕事をする醍醐味も味わうこともできた。

 

 

けれども、仕事を続ける中でどうもコモディティ・デリバティブという商品に自分がキャリアを賭けることはに心から踏み切れない自分がいた。

 

そんな中、自分が大学時代から書き連ねていたEvernoteの”人生でやりたいことリスト”を見返すときがあった。

まだ消化できてないことや、もはや興味を失ったこともあったが、その中の”Jクラブの経営を担っていつかレアルマドリーやマンUを倒すジャイアントキリングを実現する”という一行に目が止まり、この会社生活の延長線上にはない究極のタスクを、やはりいつか成し遂げたいと感じた。

そんなタイミングでNewsPicksでFIFAコンサルタントの方の記事を読み、FIFA MASTERの存在を知り、レアルマドリーの大学院やリバプールのFootball MBAの存在を知り、大学院に行くことも検討したが、いきなり今の会社を辞めてその道に人生をBetするほどの勇気はなかった。

もっと手軽なものはないかと探していたところ、J.LEAGUE HUMAN CAPITAL(現SPORTS HUMAN CAPITAL)というプログラムを発見した。

社会人歴3年は満たしていないし、受講費54万円の負担はデカかったが、大学時代にインターンをしていたことを換算すれば3年は超えるだろうという屁理屈を捏ね、物産2年目の冬のボーナスを投下し、まずは好きなものに片足を突っ込んだ。

 

JHCの学びは非常に濃かった。詳細はまた別のエントリーで記載するが、Jリーグ・クラブには数え切れないほどの価値が眠っているし、人々の感情を豊かにする最強のツールであると、学べば学ぶほどに新しい価値や魅力を感じた。

東京五輪や可処分時間が増えていくこれからの時代において、スポーツは必ず成長産業になるし、その性質から様々な産業と接点を持ち、世の中を良くするツールになる可能性を感じた。

一方で、スポーツ界全般的に人材・組織の面ではまだまだ未整備/未成熟な部分も多く、これから来る大きなイベントやトレンドに対して人材が相対的に少ないのではないか、と様々な方の話を聞いて感じるようになった。


まだ前職で何かを成し遂げたわけでもないし、海外就業生に行く機会も掴んでいないままに会社を去ることに若干の後悔はあったが、それ以上に自分が昔から憧れていた世界で、好きなサッカーを仕事とし、これからの成長産業の中で20代で貴重な経験をキャリアとして経験出来ることの魅力を感じ、昨年の4月に現職の門を叩き、スポーツ界に飛び込んだ。

 



  

転職して一年、好きなものを仕事にしてみて感じたこと。

一言で言うとそれは”生きている”という感覚だった。

 

意外だった。もっとサッカーが好きになるとか、そういうもんだと思っていた。

 

だが感じているのは人生の濃度が濃くなってきている、そんな感覚だった。

そしてこの感覚は好きとか嫌いを超えて、何か大きな自信を与えてくれるような力強いものだった。

     

 

生きている、という表現が適切かどうかはわからない。もちろん前職にいるときに生きていないと感じたことはなかった。ただ、大学時代にフットサル部で無心でボールを蹴っていた頃やTRYFで就活生と向き合っていた頃と比べてエネルギーが落ちている感覚があった。それは社会人として我慢すべきこともあるし、身につけるべき素養なのだと言い聞かせていた。

   

何がこの感覚をもたらしたのだろうか。

  

確かに仕事は忙しくなった。転職直後は何も知らないところからのスタートなので、右も左もわからず、覚えることに必死だった。

だが素敵な上司や同僚・パートナーに恵まれ、少しずつ仕事が増えて来た頃、転職して得たものは”好きなものを仕事にした満足”ではないと分かった。
   

   

確かにスポーツの仕事は楽しい。

でも、スポーツの仕事が出来ることが楽しいというよりも、

パートナーや社内の人と会話をし、ファンやパートナー企業のためにもっとこんなことができるといいよね、という思想で一緒に何かを作り上げる、あるいは、来るべきワールドカップや東京オリンピックに向けて仕込みをしていく、といった仕事を、

毎日走りながら考えて動く日々が続くことに”生きている”という感覚を持つのだとわかってきた。

  

そしてそのとき、この仕事に携われてよかったなと幸せだと感じているのだと気付いた。(もちろん、日々は毎日の仕事や約束を守るのに必死で苦しいし、やらねばならぬことの多さに"ぐぬぬ・・・"となってるのが99%だが、ふとそんな思いを持つことがある)

  

  

長くなったが、一年経って思うのは、好きなことを仕事にする、ということは正直そんなに大事じゃないのかもしれないと思う。

 

仕事を通じて、もっと出来たはずと思える悔しさを感じる経験や、未来に向けて新しいチャレンジを出来る環境にいることの方がきっと仕事を通じて得る満足や幸せは自分にとっては大きいし、それはもし前職の仕事でその魅力を感じていたらそれはそれで幸せだったかもしれない。

  

好きなことを仕事にする、というのはそんなに大事じゃなくて、結局は仕事を通じて何かを生み出す働き方やそれを体現できる環境と思想が大事なのかもしれない。


とりとめもなくなってきましたが、転職して一年、無事になんとかやってます。暫くは仕事に溺れながらも泳ぎ切ろうと思います。



Beingを更新し続ける4人のブログ

20代・30代・40代が自由に思考実験するブログ。仕事柄、サッカーやスポーツ、キャリア論の話が中心です。

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